わたしは新しく始めた船頭稼業にもだいぶ慣れ、同居中の彼女はダイビングショップを辞めて免税店で働くようになり、愛犬エンゾはダイビングボートに乗ったり、ショップでマスコットしたり、はたまた免税店で客引きなどをして過ごしていた。

彼女は休みの日にはわたしのボートに乗って遊びでダイビングをする事はあっても、インストラクターとして働くつもりはなく、免税店員として仕事を続けるつもりだった。
だったのだが、
問題が発生した。最近でこそ大分融通が利くようになったものの、当時は滞在ビザの取得が非常に大変だった。もちろん彼女は就労ビザを取得していたのだが、その条件は最初に勤めていたダイビングショップに限られるもので、免税店員として書き換える事は出来なかった。いろいろと持てる限りのコネクションを使ってみたが、書き換える事は出来なかった。
ビザが書き換えられないと彼女はニューカレドニアに住み続ける事は出来ない。いったん日本に帰国して新たに免税店の店員としてビザを申告したとしても、そう簡単にビザが取得できる時代でもなかったし、もしうまくいってもビザが取得できるのは半年ぐらい先の事になってしまう。
困ったわたし一人ではエンゾの世話も十分に出来ない。
ほんとうに、困ったわたし一人では毎日おいしい晩ごはんを作れない。
そう、すでにわたしは彼女の作った食事がなければ生きていけない男になっていたのだった。食事と言う餌にエンゾもろともしっかりと捕まっていたのだった。
こうなったら仕方がない、確実にビザが取れる方法が一つだけある。
結婚しよう
そして2人して急遽日本に一時帰国して入籍し、フランス大使館に奥様ビザの申請を出して彼女は家内になった。そしてわたしの食生活は保証されたのだった。
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